ジョー奥田が届ける「Tokyo Forest 24Hours」

News | June 08, 2018

6月20日に発売が迫ったジョー奥田氏の新作「Tokyo Forest 24Hours」。今回ハワイから東京に舞台を移したのはなぜか、また東京の森・明治神宮にてどのようにレコーディングがなされたのか、ジョー奥田氏自らに解説してもらいました。

今回、明治神宮をテーマに作品を作られた経緯を教えて下さい。


僕にとって明治神宮は東京で最も好きな場所なんです。好きが高じていろいろと調べるうちにこの森が世界的に重要な価値があることに気が付きました。それは世界最大の人工の森であることです。つまり人間の英知を結集すれば、生態系が成立した本当の森を創ることが出来る、という証明でもあるわけですね。

その森の21世紀の音を記録として残しておきたいと思ったのがこの作品を作る経緯です。

収録に使用された機材を教えて下さい。


マイク
Neumann KU-100 ×2(バイノーラル録音)
Sennhiser AMBEO VR MIC ×1(VR録音)

レコーダー
SONY D-100(KU-100定点収録用)
KORG MR-1000(KU-100別場所収録用)
Sound Devices Mix-Pre6(AMBEO VR MIC収録用)

マイクプリアンプ
Sound Devices MixPre-D(D-100用)

機材のセッティングに留意された点は?


KU-100とAMBEO VR MICはあとで比較したかったので、なるべく同軸になるようにそれぞれをスタンドに立ててセッティングしました。

またレコーダーとマイクプリ用に外部バッテリーを用意して、24時間の録音に備えました。

フィールドレコーディングで一番大切なことは、どこにマイクを立てるかということだと思うのですが、今回は明治神宮の森を録りつつその向こう側の街の音も収録したかったので、場所選びには時間をかけました。

また今回ご協力いただいたSennhiserさんからお借りしたもう1台のKU-100は、定点マイクだけではカバー仕切れない清正井や森の別の場所で収録するのに使用しています。

レコーダーのレゾリューションは下記の通りです。
D-100:DSD2.8MHz
MR-1000:DSD5.6MHz
MixPre6:PCM192kHz-24bit

それぞれのレコーダーのMAXの設定にしています。最終的にCDになると44.1kHz-16bitになるわけですが、収録時にはなるべく高いレゾリューションで録っておいた方が音のディテールが良くなるからです。

編集はどのような機材で行われたのですか? また編集の手順を教えて下さい。

編集にはAVIDのPro Toolsを使用しました。Pro Toolsはずいぶん初期の頃から使っているので、一番使い慣れていてストレスなく作業が出来るからです。

準備の手順は、以下の通り。
1)収録した音源ファイルをすべてハードディスクに取り込み、DSDからPCM192kHz-24bitに変換

2)AMBEO VR MICで収録したファイルは4ch.のA-FormatをB-Formatに変換

3)Noise MakersのプラグインAmbi Head を使用して、192kHz-24bitのステレオwavファイルを書き出し

4)それぞれのファイルをPro Toolsのタイムラインに時系列に沿って並べていきます。こうすることで一列に24時間並んだセッションファイルになるわけです。

ここまでが準備でこれから編集作業が始まるわけです。何度も何度も全体を聞き返して、使う箇所を選んでいきます。

今までの作品の編集作業と比べて、今回違っていたところがあれば教えて下さい。


どの箇所を使うか選ぶにあたって、今までは、自然の音として美しいか美しくないか、という基準で選んできましたが、今回は全く視点を変えています。今までは自然の音を美しさを伝えたい作品が多かったので人工の音は一切排除していましたが、今回は森と都会の対比がテーマですから、人工音の面白さの部分に注意して選びました。

リスナーの方にここを聞いてもらいたいという聞き所があったら教えて下さい。

この作品のオープニングとエンディングは清正井の水の音を使っています。しかもオープニングには10年前に録った清正井の音。そしてエンディングは昨年11月3日に同じ場所で同じ時間に録った音を使っています。これは自然の音の永遠性を表現したかったからです。

またこの作品には、朝の山手線、人の話し声、車の音、などなど、多くの街の音が入っています。神宮の森の生き物達が、24時間どのような音を聞いて生活しているのか、森の小鳥になった気持ちで聞いてみて下さい。

それとこの作品はすべてバイノーラルで録音されていますので、最初に聴かれるときには必ずヘッドフォンを使用して聞いて下さい。

部屋を少し暗くすると、さらに没入感が増してお楽しみいただけます!